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【仕事→うつ病→休職→退職→傷病手当】逃亡生活編

仕事と鬱と退職と傷病手当

前話→【仕事とうつ病と退職と傷病手当】自殺願望編

思った通り、やっぱり私はヘタレだった

今日が決行だと決めた2017年1月下旬の月曜日。

昨日のうちにやる仕事は全て終わらせた。あとは外回りに出て携帯の電源を切り爆死するだけだ。

銀行に行って現金は全部下ろして自宅の彼女のタンスに入れておいた。

今(2018年9月)も継続中だが、当時、同棲していた彼女がいた。

でも私はヘタレだった。道の広い北海道。自損事故など、札幌中心部でもない限りどこでも起こせるはずだ。

どこでやろうか。なるべく誰にも迷惑かけず、自分以外物理的な怪我もせず、警察がちょちょっと処理しやすいところ。

幸い今は真冬。発見が多少遅れても私の遺体が損傷以外で酷いことになることもないだろう。

意外とこういう時って、未来が無いのに何でもできる気になるものだ。

やり残したことをやれるだけやろう。いつ死んでも良いじゃないか。ここでまず決心が鈍ったのだろう。

逃亡生活1日目。

会社を出て銀行へ。現金を全部下ろし、彼女のタンスへ入れた。

遺書も書いた。彼女と両親宛だ。

両親には今までの不出来な息子である自分を懺悔した。彼女とは3年以上同棲しており、生計も同棲以来ずっと共にしおり、事実婚状態にあること。だから、私が死んだ後に入るであろう保険金の半分は彼女に渡してほしい旨を書き、実家に送った。

彼女には今までの感謝。これから自分が行うことの詫び。なぜこうなってしまったかの経緯を書き綴った。それも自宅宛てに送った。

最後に会社に。文面は大きな字で「私は直属の上司に殺された」ただこれだけを書いて役員の一人に送り付けた。

その日はとにかく一人でゆっくりお酒が飲みたかった。

ススキノの外れの安いビジネスホテルに泊まった。

たくさんお酒を飲んだ。訳が分からなくなるくらい飲んだ。そして1日目は終わった。

逃亡生活2日目

安いビジネスホテルをチェックアウトぎりぎりの時間まで居座った。

なぜならハンパなく二日酔いになっていたからだ。

ささやかではあるが私には達成したい夢があった。私は漫画が好きだ。

一日中漫画喫茶にいて好きな漫画を読みまくるのだ。

死のうとしている人間の考えることなどよく分からないものだ。

私は「北斗の拳」を全巻読破した。やっぱラオウすげーけど、補正入ったケンシロウが最強だわ。

午前中に入った漫画喫茶も出たら夜だった。

どうしよう。そろそろ決行しようか。でも心残りがまだあった。

私は晴れた日の冬の羊蹄山が好きだ。明日は晴れらしい。見れるかどうか分からないが行って

みよう。どうせあとは死ぬだけだし。そうして私は中山峠を走った。

ー恐るべし北海道警察ー

中山峠を下り、喜茂別に入る。まっすぐ行けばルスツ、右に曲がれば倶知安のT字交差点。羊蹄山を見るならそこを左折だ。夜中だから車中泊しよう。まぁ、めんどくさくなったら決行してもいいし。

そうして普通のスピードで走る。

ふっとバックミラーで後ろを見ると赤灯をつけたパトカーがぴったり張り付いている。
スピーカーでなにやらわめいている。

「こんな時にスピード違反かよ~」

そんなことを考えながら降りてきたお巡りさんに窓を開けて対応する。

「なんで止められたかわかりますか?〇〇さんですよね?」

「は?なんで俺の名前知ってるの?」

「失踪届出されてるんですよ。Nシステムでナンバー検知したから追ってきました。」

警察ってスゲー!!私の為にそこまでするの?そんな暇なの?ほかにすることないの?ってかNシステムってほんとスゲー!

「これって逮捕されるの?」

「いや。逮捕じゃないです。身内の人に迎えに来てもらいます。」

「いやいや。こんなところまで迎えに来れないし。自分で帰るからいいよ。」

そう言って私はアクセルを踏み、警察を巻きました。せっかく俺の為に働いてくれたお巡りさんごめんなさい。

とりあえず、Nシステムってナンバーで検知するからコンビニで買い物したビニール袋で、何かの拍子にナンバープレートに引っ掛かってプレートが半分見えないように細工した。これって道交法違反だろう。でも、これから私が決行しようとしていることに比べれば些細なことだろう。そう自分をなっとくさせた。

2日目の夜は海岸線の国道にあるパーキングに止めて車中泊をした。

逃亡生活3日目

朝起きたらそれは気持ちのいい天気だった。車の暖房のお陰で体も温かい。うっすら雲がかかり、雪化粧した羊蹄山も良く見えた。綺麗だった。

さぁ。今日はどうしようか。

そうだ。道北に行ってみたい。どうせ時間になにも制約も無い。当初の予定では私はもうこの世にはいないのだ。

私は岩内からひたすら海岸線を走り、積丹半島を越え北を目指した。

羽幌町あたりから内陸に入り美深町に行った。

何か所かNシステムは大丈夫だったろうか。

途中でミニパトとすれ違い、猛スピードでUターンして追っかけてきた。

コンビニの駐車場の雪山の陰にうまく隠れてやり過ごすことができた。

ここで私に分からない不安があった。

失踪届は誰が出したのだろうか。もし職場なら万が一警察に保護されたら問答無用で会社に連れ戻されてしまう。それだけは絶対に嫌だ。

だからパトカーからは逃げなければならない。

あまり遠くで決行したら家族に多大な迷惑をかけてしまう。

美深から旭川通過し、留萌に抜けて札幌を目指した。

大吹雪通行止め寸前の猛吹雪だった。

ここで事故が起こるならしょうがないだろう。そんな吹雪だった。

でもこれで事故るようなら、今までの人生とっくに生きてはいまい。

なんなく札幌に帰ってきてしまった。

どうしよう。そうだ。札幌には良いと所があるんだ。

24時間営業の仮眠も取れる大きなお風呂。漫画も豊富で24時間温泉入り放題。

行ってみたら、深夜に行ったら深夜料金が取られるみたいだ。

考えてみると、ゆっくりお風呂に入るのも久しぶりだ。ずっと運転だったから大好きなビールも飲んでいない。

3日目はここの仮眠室で終わった。

逃亡生活4日目 涙の出戻り

半日で1000円ちょっとでいつまでも居座れるでっかい温泉。結局24時間いました。

お風呂→漫画→寝る→お風呂→漫画→寝るのローテーション。

こんな状況だが思った。いままでにこんなのんびりした生活をしたことがあっただろうか。

死ぬことしか考えてなかったこの数週間。

なんか死ななくてもいいかも?そう思えてきたのも事実。

彼女や家族の事を考えた。

正直、お金が残せれば犬死ではない、産まれた意味はあったと、ついさっきまで考えていた。

しかし、残された方はどう思うか。もし、私と彼女が逆だったら。

彼女が仕事に苦しみ、自ら命を絶つようなことをしたら、私はどう思うだろうか。

サウナに入りながら、汗だくになりながら、そう考えた。

夜中のとんでもない時間だったかが、私は携帯の電源を入れた。

おびただしい数の着信履歴、メール通知、彼女からの動画を取ったビデオメッセージもLINEできていた。

涙が出た。自分は何をやっているのだろうか。

このまま死んで、家族に大金を残しても彼等は報われるのか。

携帯を手に数時間止まっていた。

彼女に悲しい思いはさせたくない。

自分は人生でトップ3に入る勇気を出して彼女に電話した。残りの2つは思い出せないけど。

「いまから帰る」と彼女に電話した。

彼女は泣きながら喜んでくれた。電話越しでも分かるあの嬉しそうな声は一生忘れないだろう。大至急私の会社まで迎えに来てくれるという。

自分の車を会社に置き、仕事に必要な物は車の中に置き、車のカギを事務所に置いとこうと思ったら、私が失踪している間に事務所の小屋のカギを変えられていたようだ。さすが抜かりない。私が夜な夜な侵入して悪事を働くとしか考えてないのだろう。

そうしていると彼女が自車で私の会社まで迎えに来てくれた。

怒りもせず、責めもせず、ただ再会を喜んでくれた。私のこれからの生活は一切見通しが立たない。でもこの泣きながらの笑顔が見られるなら、生きるのもいいかな。心底そう思えた。

そして、やっぱり死にたくなかった。

 

続く【仕事→うつ病→休職→退職→傷病手当】うつ病と休職編

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